目次
「食」における出来立ての重要性
消費者が商品を選ぶ基準は、価格や手軽さだけではありません。
例えば「出来立てのおいしさをどこまで再現できているか」という点も、購買決定やリピートに影響を与える重要な要素として考えることができるでしょう。
ここでは、消費者ニーズの実態と、出来立てがおいしく感じられる理由を確認します。
出来立てが求められる背景
日清オイリオグループが実施した調査(生活科学研究レポートNo.52)では、中食の利用頻度が変化した理由について、以下のような結果が出ています。
| 中食の利用頻度 | 主な理由 | 割合 |
|---|---|---|
| 増えた理由 | できあいの食べ物のコストパフォーマンスが良いから | 37.1% |
| 自宅で作るよりもおいしいから | 29.9% | |
| 減った理由 | 自由に使えるお金が減ったから | 34.5% |
| できあいの食べ物のコストパフォーマンスが悪いから | 27.3% |
調査結果が示す通り、利用が減った最大の要因は自由に使えるお金の減少です。
消費者の財布の紐が固くなる中で、中食に対しても非常にシビアな「価格妥当性(コスパ)」と「確かなおいしさ」がセットで求められていることが分かります。
中食特有の購入から喫食までに時間が空くというシーンにおいて、時間が経って食感が悪くなるといった経時劣化が起きれば、消費者は即座に「おいしくない=コスパが悪い(損をした)」と判断してしまいます。
したがって、時間が経過しても「出来立てと変わらない品位」を維持できるかどうかが、消費者の厳しいコスパ基準をクリアし、商品の満足度やリピート率を左右することにつながります。
出典:日清オイリオグループ「生活科学研究」レポートNo.52
出来立てはなぜおいしい?
そもそも、出来立ての食品がおいしく感じられるのはなぜでしょうか。ここでは、品目ごとに出来立てがおいしくなる理由と、時間経過でおいしさが損なわれる理由を解説します。
ご飯類
炊きたてのご飯がふっくらと柔らかいのは、でんぷんが糊化(α化)した状態で水分を十分に含んでいるためです。
お米のでんぷんはアミロースとアミロペクチンという2種類の成分で構成されています。これらの成分は、炊飯時に加水と加熱を行うことで、もちもちとした食感が生まれます。これが糊化(α化)と呼ばれる現象です。
しかし、炊いてから時間が経つとでんぷんが老化(β化)を起こし、水分が放出されて硬くボソボソとした食感に変わります。5℃以下のチルド帯では特に老化(β化)が急速に進行することも知られています。
麺類(パスタ/中華麺/焼きそば/うどん)
茹でたての麺がおいしい理由は、主に4つの区分に分けることができます。
①でんぷんの糊化(α化)によるもちもち感
②グルテンの熱変性による弾力あるコシ
③表面と内部の水分量の差(水分勾配)が生む独特の食感
④表面の水分が生み出すツヤ
これらの項目をそれぞれの麺類に当てはめてみましょう。
一般的に知られているパスタの「アルデンテ」は糊化が中心まで進みきらない状態だからこそ生まれる食感です。うどんのコシはグルテン構造が、水分で均一化すると失われるといわれています。
中華麺は鹹水(かんすい)由来の弾力が特徴ですが、時間経過で急激に膨張し「伸びる」原因になります。焼きそばは蒸し麺を使うため元々老化が進みやすく、冷めると油と水分が分離して固く感じられます。さらに麺類全体では、時間経過とともにでんぷんの老化・水分勾配の消失・グルテン構造の変化が複合的に起こり、ツヤの低下や麺同士のくっつきといった「ほぐれ性」の課題も発生します。
野菜の入った炒め物
炒めたての野菜がおいしいのは、高温短時間調理によって野菜の細胞壁の破損が最小限に抑えられ、内部の水分が閉じ込められているからです。加えて、調理直後は香ばしい香気成分が最も強く立ち上がり、食感と風味の両方がピークにあります。
しかし、焦げ防止のために低めの温度で時間をかけてしまうと、出来上がりの段階ですでに離水が生じていることも珍しくありません。そこからさらに時間が経つと、2つの劣化が同時に進行します。
1つは、調味料の塩分浸透による細胞膜の破壊と水分流出です。製造工程でのかき混ぜも細胞壁を傷つけ、離水を加速させます。もう1つは、揮発性の香気成分が冷めるとともに散逸し、風味が薄れてしまう現象です。
パイ・ペストリー
パイやペストリーの出来立てがおいしいのは、生地と油脂が幾重にも折り重なることで生まれる構造にあります。これは油脂の「ロールイン性(生地に練り込まれずに薄い層を維持する性質)」によるもので、焼成時に水分が蒸発して生地が膨張することで無数の空洞ができ、あのサクサクとした歯切れの良い食感をもたらします。
しかし、時間が経つと水分移行と呼ばれる現象が理由で、味が落ちてしまいます。これは、水分量の多いフィリングから、パイ生地へ水分が移動し、サクサクの層構造がふやけて弾力のある食感に変わってしまうからです。
アップルパイやジャムパイなど水分の多いフィリングを使う製品では、この影響が特に顕著です。同時に、焼成時に液状だったバターが冷えて再凝固し、吸水した生地とともに層が潰れてボリューム感が失われ、香気成分の揮発や酸化現象により焼きたての芳醇な風味も薄れてしまうことも挙げられます。
水分移行・油脂の再凝固・風味低下が同時進行するため、パイ・ペストリー類は焼成直後と数時間後で品質が大きく変わりやすい品目です。
揚げ物
とんかつやコロッケなどの揚げ物は、時間の経過とともに衣のサクサク感が失われ、べちゃっとした食感に変わります。これは、内部の具材に含まれる水分が、時間とともに外側の衣へと移動(水分移行)してしまうためです。
また、電子レンジで再加熱するタイプの冷凍の揚げ物で衣のサクサク感が失われる原因の一つには、冷凍保管中に発生した氷結晶が溶け出し、衣が水分を吸ってしまうといった点もあります。
その他、風味について
旨みは甘味・酸味・塩味・苦味と並ぶ基本味の一つで、料理全体の味わいに奥行きと持続性を与えます。旨みが豊かな食品ほど「コクがある」「後を引く」と感じられ、消費者の満足度に直結する要素です。
しかし、グルタミン酸やイノシン酸などの旨み成分は水分とともにドリップとして流出しやすく、揮発性の香気成分も冷めるにつれて散逸します。テイクアウトや宅配では「作りたてより味が薄い」と感じられやすく、見た目や食感ほど明確に言語化されないぶん、「なんとなく物足りない」というリピート率低下の要因になりかねません。
時間が経っても「おいしい出来立て感」を維持するには?
前章で述べた通り「出来立てのおいしさ」が時間とともに失われるのは、感覚的な印象ではなく、食品の内部で起こる物理的・化学的な変化によるものです。この変化のメカニズムを正しく理解することが、品質維持のための打ち手を選ぶうえで不可欠です。
時間が経つとおいしさが損なわれてしまう科学的理由
前章で見てきた「出来立てのおいしさ」が失われる原因は、大きく3つに整理できます。
1つ目は、でんぷんの老化です。米飯のでんぷんが再結晶化し、水分が離水して硬くパサついた状態になります。5℃前後のチルド温度帯でこの変化が最も速く進行します。
2つ目は、水分移行と食感変化です。揚げ物では具材から衣へ、パイではフィリングから生地へ水分が移動し、サクサク感や層構造が失われます。
3つ目は、旨み成分の散逸です。グルタミン酸やイノシン酸などの旨み成分が、水分とともにドリップとして流出したり、揮発性香気成分が散逸したりします。
これらの現象は物理的・化学的に不可避ですが、油脂の力を活用することで、その進行速度を大幅に遅らせることが可能です。次のセクションでは、当社が開発した具体的な製品と技術をご紹介します。
「経時劣化の原因」を解消する日清オイリオの油脂ソリューション
当社では、油脂の結晶構造・粒子径・乳化状態を精密にコントロールする独自技術で、品目ごとの経時劣化課題に対応しています。
炊飯油
「日清炊飯油CH2」は5℃の冷蔵保存時にもご飯の老化を防ぐ、低温耐性が強化された炊飯油です。水に対する分散性が高いため、炊飯前の米と水に投入し、ご飯をコーティングすることにより効果を発揮します。
一方、「日清炊飯油TK」は米の粒立ち感の向上に特化した製品です。加水量を増やしても粒立ちを保つことができ、歩留まり向上とおいしさの両立を図りたい場合に適しています。
日清麺がほぐれやすいオイル
「日清麺がほぐれやすいオイル」は、麺の表面に均一な油膜を形成し、茹でたてのほぐれやすさを長時間キープする製品です。
パスタ・焼きそば・うどん・ラーメンなど幅広い麺類にお使いいただけ、時間が経過しても麺がほぐれにくくなることや、ボソボソ感、ツヤの低下をしっかりと防ぎます。
さらに、パスタにおけるアルデンテ感の維持や、ソース乗りの良さにも寄与し、消費者が食べる瞬間まで「出来立てのおいしさ」を保つサポートをします。
日清炒め油 野菜シャキシャキタイプ
「日清炒め油野菜シャキシャキタイプ」は、油の膜が野菜表面をコーティングし、炒め調理やブランチング後の水分流出を物理的に遮断します。
時間の経過とともに水っぽくなる現象を抑え、シャキシャキとした歯ごたえを維持します。
日清素材ストロングR70
「日清素材ストロングR70」は、素材の持つ水分と呈味成分を抱き込み、喫食時に口腔内で早く広がることで旨味を含む、味・香りのトップが強く感じられます。
含水性、拡散性、残存性により、 食品素材の風味を引き立て、味わいを一層強化します。調理後の時間経過による風味の散逸を抑え、出来立ての味わいを長く保持します。
バッター用油脂
揚げ物の衣への水分移行を防いで、サクサク感を維持するための「バッター用油脂」があります。
フライ後に冷凍するタイプの揚げ物冷凍食品をレンジで加熱した際に、衣のサクサク感が失われる原因の一つが、中具から衣への水分移行です。冷凍食品の場合、冷凍時の温度変化によって、より水分移行が発生しやすい状態になります。
コロッケなどのパン粉系の揚げ物の場合、「バッター用油脂」をバッター液に配合することで、中具とパン粉の中間のバリア性が高まり、水分移行を抑制します。これにより、レンジアップ後の衣のサクサク感維持が期待できます。
シートマーガリン
パイやクロワッサンの層構造を長時間保つためのシートマーガリンとして、「日清トールシート300CP」と「日清クリスピート300」の2製品をラインアップしています。
シートマーガリンは、パイ生地の製造工程を簡素化するためにシート状に作られたマーガリンです。「日清トールシート 300CP」は、 シートマーガリンの中でもパイ・ペストリー製品のボリュームアップに特化した製品です。パイのボリュームが出ることで、サクサク食感の向上につながります。冷蔵・冷凍下においても、よりボリュームがあり良好な食感を得ることができます。
「日清クリスピート300」は、油脂結晶の微細化技術によりフィリングからの水分移行を物理的にブロックするシートマーガリンです。店頭で数時間陳列した後でも底面がふやけにくく、焼きたてのような層感を維持できます。温度変化による硬さの変動が少なく、ロールイン温度8℃・13℃・18℃のいずれでも安定した作業性を発揮します。
まとめ
本コラムでは、消費者が求める「出来立て感」のニーズと、時間経過によっておいしさが損なわれる科学的メカニズム、そしてそれを解決する当社の油脂技術について解説しました。
ご飯類では「日清炊飯油CH2」「日清炊飯油TK」、揚げ物では「バッター用油脂」、パイ・ペストリー類では「日清トールシート300CP」「日清クリスピート300」、麺類では「日清麺がほぐれやすいオイル」、旨みの領域では「日清素材ストロングR70」と、品目ごとの課題に応じた機能性油脂をラインアップしています。
「時間が経ってもおいしい」という付加価値は、消費者の再購入意向を高める重要な差別化要素です。貴社の商品開発や品質改善にお役立ていただければ幸いです。各製品の詳細な機能や特長につきましては、以下の製品ページよりそれぞれご確認いただけます。
