パン・米飯・菓子の食感変化|でんぷん老化のメカニズムと対策

パン・米飯・菓子の食感変化|でんぷん老化のメカニズムと対策

パンや米飯、菓子など、でんぷんを多く含む食品の開発では、翌日の硬化、冷蔵保存によるパサつき、冷凍解凍後の食感低下といった、保存や流通を経たあとの食感変化が課題になることがあります。

こうした変化は乾燥や水分量の変化以外に、でんぷんの影響についても一つの観点になります。製造工程で糊化(こか)したでんぷんが、後工程や輸送中にどのように変化し、食感に影響するのかを踏まえた設計が重要と言えます。

本コラムでは、でんぷんの老化のメカニズムを整理したうえで、パン・米飯・菓子それぞれの食感変化への対応と、具体的なアプローチをご紹介します。

パン・米飯・菓子の食感変化|でんぷん老化のメカニズムと対策

まず、「でんぷんの老化」とは何か

でんぷんの老化では次のようなことが起こります。

でんぷんの老化とは、加熱と吸水によって糊化したでんぷんが、保存中に再結晶化し、食品が徐々に硬くなっていく現象です。その過程で、硬化・ボソつき・離水などの食感変化が現れます。

ここで重要なのは、次の3点です。

  • ▪老化の出発点は、糊化したでんぷんであること
  • ▪老化は、保存・冷却中に進む構造変化であること
  • ▪硬化や離水は老化そのものではなく、老化の結果として現れる変化であること

パンが硬くなる、ご飯がボソボソする、菓子のしっとり感が落ちる。こうした現象は、乾燥だけで説明できるとは限りません。でんぷん自体の状態が変わることで水の抱え方や組織のあり方が変化し、口に入れたときの食感の差として現れます。

糊化から老化へ —でんぷんの中で何が起きているのか

老化は、糊化した状態を起点に進みます。その糊化では、でんぷん粒の中で次のような変化が起きています。

生のでんぷん粒は、内部で分子同士がきつく規則正しく並んだ構造をとっています。そこに十分な水がある状態で熱を加えると、でんぷん粒は水を吸って膨らみ、その規則的な並びがくずれます。

さらに、成分の一部が粒の外へ出て、全体として柔らかく粘りのある状態になります。これが糊化です。

糊化が起きている具体例

糊化は、身近な食品でも食感として現れています。

食品食感として現れる特徴
炊きたてのご飯ふっくらした柔らかさと、適度な粘り
焼成直後の食パン・ロールパンしっとりした口溶けと柔らかさ
焼成直後のマフィン柔らかく、伸びのある食感

糊化後の変化

ただし、この柔らかい状態は、そのまま保たれるわけではありません。保存・流通などによる時間の経過や、保存・流通時の温度によって、糊化した状態から、少しずつ元へ戻る方向に動き始めます。

製造直後の比較的早い段階ではアミロースの老化が起こりやすく、その後時間をかけてアミロペクチンの老化が進みます。その結果、食品の中では次のような変化が起こります。

  • ▪組織が詰まってくる
  • 水を抱えていた状態がくずれ、水が動きやすくなる
  • ▪離水や乾燥感が出やすくなる
  • ▪口の中でほぐれにくくなる
  • ▪硬さやボソつきが目立つようになる

硬くなる、ボソつくといった変化は、必ずしも水分が減ったせいではありません。水分が十分に残っていても、でんぷんの状態が変われば食感は落ちます。

そのため、食感の変化を考える際には、水分量だけでなく、でんぷんの状態も併せて確認することが重要です。食感はこれら二つの要因が複雑に影響し合って変化するため、原因を見極めるには多面的な評価が求められます。

経時における老化の進行

老化の進み方は、製造直後と保存中とで異なります。段階ごとに目立ちやすい変化は、次のとおりです。

フェーズ主な現象商品例
製造直後〜短時間表面の締まり、柔らかさ・伸びの低下蒸したての団子、焼成直後のパン
製造翌日(D+1)以降硬化、ボソつき、口溶け低下、ほぐれにくさ翌日の食パン、おにぎり、チルドマフィン

同じ「硬くなる」でも、製造直後からの変化を見るのか、D+1:製造翌日、D+2:製造2日後での変化か、チルド保管後か、冷凍・解凍後かで、注目する評価項目は変わります。

製造から流通の状態、そしてお客さまが食べるタイミングまで踏まえて評価すると、対策の方向をそろえやすくなるでしょう。

想定する状態主な評価視点
製造直後できたてとしての評価
D+1、D+2流通・陳列後の品質
チルド保管後低温度帯での食感変化
冷凍・解凍後凍結・再加熱を含めた食感

なぜチルド流通品で課題が大きくなりやすいのか

老化は、時間の経過と温度条件の両方に影響を受けます。製造から時間が経つことによって老化は進行しますが、温度条件によってはそのスピードが速くなります。

でんぷんは0〜5℃付近で老化しやすく、チルド流通はまさにこの帯にあたります。衛生管理や売場運用ではメリットがある一方で、パンや米飯、菓子にとっては食感が変わりやすい条件です。

チルド流通で起こる食感変化の例

ご飯やパン、焼き菓子のように老化しやすい食品で、チルド流通中にでんぷん老化が進行し、硬化やパサつきなどの食感変化が生じやすくなります。

一方で、他にどのような食材と組み合わせているか、陳列の環境はどうなっているかといった、それぞれに注意すべき点があります。

食品カテゴリー起こりやすい現象
惣菜の米飯・寿司・おにぎりご飯の硬化、粒立ちの低下、ボソつき
包装サンドイッチパンの締まり、具材との一体感の低下
チルドマフィン・ケーキしっとり感の低下、重さ・もたつきの増加

チルド流通では、微生物増殖を抑えるために冷蔵温度帯を保つ必要があります。一方で、冷蔵温度帯はでんぷん老化が進みやすく、ご飯やパンなどの硬化やパサつきにつながります。そのため、食感変化を考慮した設計が求められます。

チルド老化対策としての冷凍と冷凍後の品質課題

チルド温度帯ででんぷん老化が進みやすい場合、冷凍保存という選択肢があります。一方で、冷凍食品では解凍後の食感低下や離水など、別の品質課題が生じることがあります。

冷凍の場合、凍結・解凍・再加熱を通じた食感の変化も課題になります。チルドでは「老化しやすい温度帯での食感変化」が、冷凍では「凍らせてから戻す過程で水と組織がどう変わるか」が課題になります。

冷凍流通での食感変化の例

以下は一例ですが、以下の様な食感変化が起こります。

食品カテゴリー起こりやすい現象
冷凍パン・冷凍ベーカリーレンジアップ後の硬化、ボソつき、ゴムのような食感
冷凍米飯レンジアップ後の硬化、パサつき、ほぐれ性低下

冷凍食品では「老化をどう抑えるか」に加えて、「水の動きをどう制御するか」をあわせて考えましょう。

パン・米飯・菓子の食感設計における油脂の役割

でんぷんの老化対策では、水分保持や食感維持を目的として保水剤や乳化剤が用いられることがあります。一方、油脂も品質設計における重要な要素の一つであり、食感や品質保持に貢献します。

用途による油脂の使い方の違い

老化対策で油脂に求める役割は、製菓・製パンと米飯とで異なります。

製菓・製パンでは、油脂そのものの分散具合や増粘剤、酵素、乳化剤といった素材の配合によって生地の食感や老化の進行が変わってきます。製造後の生地の老化を見据えて配合を検討するとともに、生地への練り込みやすさといった基本的なオペレーションも踏まえて選定していく形になります。

米飯では、炊き上がりの状態をどこまで保てるかが中心の課題です。ここでの油脂の役割は、ご飯の表面を覆って保護するコーティングです。そのため、炊飯のときに油脂が米粒へ均一に行き渡るか(分散性)が、仕上がりを左右します。

用途別ソリューション例

当社は、パン・菓子・米飯、それぞれの食感課題に合わせて、必要な機能を持たせた油脂をご用意しています。以下に、用途別の主な課題テーマと関連する製品例を整理します。

日清ニューベイク100

増粘多糖類を膨潤させた状態で含有することで、保水効果を安定して発揮できる改良剤です。パン・菓子の生地の柔らかくしっとりした食感を長続きさせます。

日清パンベイク30

乳化剤と酵素を含み、生地中に均一に分散させることができる改良剤です。冷蔵下でも柔らかい物性のため、パン・菓子の生地に練り込みやすいのが特徴です。

日清炊飯油CH2

5℃の冷蔵保存時にもご飯の老化を防ぐ、低温耐性が強化された炊飯油です。水に対する分散性が高いため、炊飯前に投入してご飯をコーティングすることで、効果を発揮します。

同じカテゴリーの中でも、起きている現象や流通温度帯、求める品質が違えば適した打ち手も変わります。どのような条件で発生している現象かを把握し、解決方法を検討しましょう。

まとめ

食品に含まれるでんぷんは、製造・保管・流通の段階で老化が進行していきます。温度条件や組み合わせる素材によって進行具合が異なるため、影響する要素も含めて老化の現象を捉えることが大切です。

油脂はでんぷんの老化対策に活用できる素材のひとつで、パン、菓子、米飯、それぞれにソリューションがあります。「翌日硬くなる」「冷蔵でボソ付く」「消費期限を延ばしたい」など、開発における課題をぜひご相談ください。

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