惣菜の「おいしさ劣化」メカニズムを解く|消費期限延長に向けたアプローチ

惣菜の「おいしさ劣化」メカニズムを解く|消費期限延長に向けたアプローチ

チルド弁当や調理麺、炒め野菜、調理パン——。「微生物試験はクリアしているのに、品質劣化が気になるから消費期限を短くせざるを得ない」。商品開発でそう感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

安全性の基準を満たしていても、「おいしさの寿命」が先に尽きてしまう。このジレンマを解消するために、「おいしさ劣化」のメカニズムを確認し、直接働きかける対策を活用することで、品質面での消費期限を延ばすことが可能です。延長が「1日」であっても、工場の稼働率・廃棄リスク・原価構造に影響する可能性があります。

本コラムでは、惣菜の「おいしさ劣化」の原因と、食品カテゴリー別の対策、当社が提供するサポート体制をご紹介します。

惣菜の「おいしさ劣化」メカニズムを解く|消費期限延長に向けたアプローチ

消費期限延長が製造現場に与える影響

消費期限の延長は、お買い上げいただくお客さまだけでなく、製造現場の仕掛品管理・生産計画・原価構造から流通段階といった一連の動きに影響がある事柄です。ここでは、「安全」と「品質」の観点で、製造現場に与える影響について確認します。

「安全」と「品質」のギャップが招くロス

食品の消費期限設定は微生物試験等の安全性に係る試験結果を優先して設定されることが多いですが、食品によってはおいしさの劣化が原因で期限を短くせざるを得ない、という場合があります。

消費者への提供価値を守るために消費期限を短く設定する、「安全性と品質のギャップ」が発生した場合、製造上のロスを生んでしまいます。

品質の寿命が延びることで解消される「3つの製造課題」

消費期限が延びると、製造現場ではどのような変化が起きるのでしょうか。大きく次の3点が挙げられます。

①仕掛品管理の柔軟化と廃棄削減

消費期限が1日延びると、仕込んだ具材や半加工品を持ち越せる期限の延長を図ることができます。製造負荷と廃棄リスクの低減につながり、製造計画の柔軟性向上が期待できます。

②受注数変動への対応

短時間納品に対応するための見込み生産は、予測が外れた瞬間に廃棄コストへと転化します。消費期限に余裕が生まれれば一定のゆとりを持つことができ、受注数の変動にも対応可能になります。機会損失と廃棄ロス、その両方への対応余力が生まれます。

③品種切り替えロスの最小化

多品種対応ラインでは、品種切り替えのたびに洗浄等の作業が発生し、「非生産時間」が発生します。消費期限の延長が在庫で生産を融通できる状態につながる場合、各品種の連続生産時間を延ばして切り替え回数を減らすことができます。稼働率が上がれば製品1個あたりの製造費への好影響も期待できます。

惣菜の「おいしさ劣化」の要因:でんぷんの老化と組織の変化

消費期限を延ばすために、「おいしさが失われる」原因を確認していきましょう。惣菜における劣化には、でんぷんの老化・細胞損傷と離水といった要因があります。代表的な現象に、以下の様なものがあります。

でんぷんの老化|ごはん・麺・パンが「硬く」なるメカニズム

炊飯・麺の茹で・パン焼成のいずれも、「加水+加熱」によってでんぷんが糊化(α化)し、膨潤することでやわらかい食感が生まれます。

しかしこの「膨潤した状態」こそが、その後の劣化の起点になります。糊化によって一度ほぐれたでんぷん分子は、時間の経過とともに再び規則正しく並び直そうとする性質を持っているためです。

冷却と経時ででんぷんの老化(β化)が進むと、でんぷん分子の再結晶化が起こり、食感が硬くなります。この老化過程では、離水しながら不均一に収縮するため、表面に微細な凹凸が生じ、ツヤが失われます。

「時間が経ったごはんがパサパサになる」「パンの食感が悪くなる」といった現象は、このメカニズムによるものです。

でんぷんの老化によるくっつき|米粒や麺がくっつき、ほぐれ性が低下する理由

加水・加熱によって糊化したでんぷんの一部が、米粒や麺の表面に溶け出します。冷却や経時でこのでんぷんが老化すると、隣接する米粒や麺を巻き込んで硬化するため、米粒同士や麺同士がくっついて離れにくくなります。製造ラインにもくっつきやすくなるため、トラブルや歩留まり低下にもつながります。

細胞損傷と離水|加熱野菜のベチャつきが歩留まりを下げる理由

野菜炒めやブランチングによりドリップが発生するのは、加熱調理によって野菜の細胞壁が損傷し、そこから内部の水分が離水するからです。

このドリップの発生は、食感の劣化だけでなく、製品重量の低下、すなわち歩留まりの悪化を直接引き起こします。パック内に水が溜まれば見た目も損なわれ、品質評価の低下にもつながります。

油脂を用いた2つのアプローチ

前章で挙げたでんぷんの老化や野菜からの離水に対し、どのような対策があるのでしょうか。油脂を用いた対策として、以下の2つのアプローチがあります。

内側からのケアとコーティング

でんぷんの老化や細胞の損傷が発生する食材の内側、外側のどちらに働きかけるかによってアプローチが異なります。それぞれの概要は以下のようになります。


内側からのケア

油脂を食材内部に分散させる、または油脂に機能成分を含ませて配合することで、でんぷん老化時の再結晶化を阻害したり、老化速度を遅らせたりするアプローチです。

コーティング

食材の表面を油脂で均一にコーティングすることで対策します。コーティングによって、でんぷん老化によるくっつきを防いだり、野菜の細胞壁を損傷から守ったりするアプローチです。

【食品別】2つのアプローチを実装する専用油脂の選び方

食品の種類によって、「おいしさの劣化」を防ぐためのアプローチは異なります。ここでは、それぞれのアプローチがどのような食品の対策に適しているのか、具体的に見ていきましょう。

カテゴリー製品名解決する課題技術アプローチと得られる効果
製パン改良剤「日清ニューベイク100」パンが翌日には硬くパサつく/乳化剤を使えない増粘多糖類をあらかじめ膨潤させて製剤化することにより、生地にそのまま添加するだけで水分保持の効果。老化を抑制し、やわらかさを維持。
製パン改良剤「日清パンベイク30」乳化剤単体では食感維持効果が不十分独自製剤化技術で乳化剤と酵素を組み合わせ、単体使用では得られない食感維持効果(柔らかさ・しっとり感の持続)を発揮。
炊飯油「日清炊飯油CH2」冷蔵保存後にごはんが硬くなる/ラインへの米粒付着低温耐性機能によりでんぷん老化(β化)を抑制。ふっくら食感と粘りを保ち、離型性も向上。
麺さばき油「日清麺がほぐれやすいオイル」時間経過で麺がくっつく/ツヤが失われソースが絡まない茹で上げの麺に均一な油膜を形成。ほぐれ性・ツヤ・ソースの絡みを同時に改善。
炒め油「日清炒め油 野菜シャキシャキタイプ」加熱調理後に野菜から水が出てパックが水浸しになる/歩留まりが落ちる油膜が細胞からの水分流出を抑制。食感・ツヤを維持しつつ歩留まりを改善。

内側からのケア

油脂の配合による対策は、パンの老化防止として有効です。

製パン改良剤:パンのやわらかさとしっとり感の持続性

対象製品:「日清ニューベイク100」「日清パンベイク30」

「日清ニューベイク100」は、増粘多糖類を事前に膨潤させた状態で製剤化した、乳化剤フリーの品質改良剤です。生地中の水分保持によりパンの老化を抑制し、「乳化剤を使いたくない」というブランドポリシーを持つメーカーのニーズにも対応いただけます。

「日清パンベイク30」は、乳化剤と酵素を独自技術で製剤化した品質改良剤です。単独での製剤化が困難だった両成分を組み合わせることで、増粘多糖類単体では得られない食感維持効果を発揮し、食パン・菓子パンの焼成後の柔らかさ・しっとり感を長時間保持します。

コーティング

油脂による食材のコーティングは、ご飯の老化防止や、麺のくっつき防止、野菜の離水抑制に効果を発揮します。

炊飯油:低温チルドご飯の老化抑制

対象製品:「日清炊飯油CH2」

「日清炊飯油CH2」は、水中に均一に分散するため、炊飯時に入れることで炊き上がりのご飯をコーティングすることができます。低温耐性の機能を持っているため、でんぷんの老化(β化)を抑制し、冷蔵保存後もふっくらとした食感と適度な粘りを維持します。

冷蔵流通が前提となる寿司やチルド弁当など、温度帯によって促進されるでんぷん老化の課題に対する打ち手になります。また、油脂によるコーティングは製造機器への付着を防ぐことにもつながり、ライン適性の向上にも貢献します。

麺さばき油:調理麺のほぐれ性・ツヤ・コシの維持

対象製品:「日清麺がほぐれやすいオイル」

茹で上げた麺に本品を麺重量の2%程度絡めることで、油が麺の表面に薄く均一な膜としてコーティングされ、麺のくっつきを効果的に防止します。

麺に油膜が付いた状態が持続するため、ツヤとコシの維持にもつながります。製造から喫食までの経時を前提とした品質維持において高い効果を発揮します。

炒め油:加熱野菜の離水抑制と食感維持

対象製品:「日清炒め油 野菜シャキシャキタイプ」

野菜の炒め調理、またはブランチングに使用することで、野菜表面を均一にコーティングします。薄い油膜が野菜表面を覆うことで、加熱による細胞壁へのダメージを軽減することが期待されます。

離水を抑制することでハリのある見た目と食感の維持につながります。離水抑制により製品重量の減少が抑えられ、歩留まりの改善も期待できます。

まとめ

でんぷん老化による硬化やパサつきが原因で短く設定せざるを得なかった消費期限も、油脂を活用した品質保持により、延長できる可能性があります。この点を考慮した設計の検討は、商品開発としても、製造マネジメントとしても意味があると言えます。

ごはん・麺・野菜・パンでは劣化の要因が異なるため、それぞれに適した油脂技術による品質保持アプローチがあります。それぞれの食品カテゴリーの課題に対応する各製品の詳細や、自社製品への適用検討は、以下よりお気軽にご相談ください。

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