食品主原料の安定供給不安 調達難対策と事例

食品主原料の安定供給不安 調達難対策と事例

食肉、鶏卵、魚介類、香辛料、米、カカオ豆。食品メーカーにとって欠かせない主原料の価格が、軒並み上昇を続けています。背景には、円安やエネルギーコストの増大、異常気象の常態化、さらには世界的な需給バランスの変化があります。いずれも一時的なものではなく、長期的に向き合う必要のある課題といえるでしょう。

原料高騰は粗利を直接圧迫し、主原料の比率が高い製品ほど影響は大きくなります。こうした環境のなかで「ただ耐える」だけでは対応が難しくなっています。いま食品メーカーに求められているのは、商品企画・開発の段階からコスト変動への対策を組み込む柔軟な姿勢ではないでしょうか。

本コラムでは、主原料高騰の背景にある構造的要因を整理したうえで、品目ごとの対策事例を具体的にご紹介します。

食品主原料の安定供給不安 調達難対策と事例

食品/惣菜メーカーを悩ませる、主原料の高騰と供給不安

食品主原料のコスト上昇は、単一の原因で説明できるものではありません。複数の構造的要因が重なり合い、食品主原料の安定供給を脅かしながら、長期にわたって製造コストを押し上げています。高騰の背景にある3つの主要因と、品目ごとの実態を確認していきましょう。

食品主原料の高騰はなぜ起きている?

食品主原料の価格高騰には、「円安およびエネルギーコストの上昇」「気候変動がもたらす異常気象の常態化」「世界規模での需給バランスの変化」という、3つの構造的要因が複合的に絡み合っていることが多いです。

円安とエネルギー価格の高騰

令和6年度の日本のカロリーベースの食料自給率は38%にとどまります。食品原料の多くを海外からの輸入に頼る構造が続く以上、為替変動の影響から逃れることは難しいでしょう。

加えて、原油価格やLNG価格の高止まりは、原料そのものだけでなく輸送コストや包材費にも波及しています。こうした多方面からのコストプッシュ圧力により、食品製造業の仕入れ環境は厳しさを増しているのです。

地球温暖化と異常気象

農林水産省の地球温暖化影響調査レポートによれば、高温障害による農産物の品質低下が全国各地で報告されています。

こういった気候変動が農業生産に与えるリスクは年々拡大傾向にあり、エルニーニョ現象やラニーニャ現象が作物収量に与える影響も無視できません。こうした作柄の不安定化は、食品メーカーの調達計画の前提条件そのものを揺るがす構造リスクとなっています。

出典:農林水産省「令和6年 地球温暖化影響調査レポート」

世界的な需給バランスの変化

農林水産省が公表した2060年にかけての超長期食料需給見通しでは、世界人口の増加と新興国の経済成長にともない、穀物や油糧種子、食肉の需要が大幅に拡大すると予測されています。とりわけアジアを中心とした所得の上昇により、食肉などの需要が増加し、国際市場での調達競争が激化すると見込まれています。

需給構造の変化は、国内の食品製造業にとって中長期の経営リスクといえるでしょう。

出典:農林水産省「2060年にかけての世界の超長期食料需給見通し」

代表的な主原料の価格高騰例

こうした構造要因を背景に、食品メーカーが日常的に調達する主原料の多くで、価格高騰や供給不安が顕在化しています。ここでは代表的な6品目の状況を確認します。

食肉(牛・豚・鶏)

飼料原料であるトウモロコシや大豆油かすの輸入価格上昇が、畜産物全体のコストを直撃しています。農林水産省の畜産・酪農をめぐる情勢によると、飼料の輸入原料価格は高値で推移しているため、畜肉価格に影響すると考えられます。

出典:農林水産省「畜産・酪農をめぐる情勢」

鶏卵

高病原性鳥インフルエンザの度重なる流行が、鶏卵市場を揺さぶり続けています。JA全農たまごの基準値(Mサイズ・東京地区)は、2025年12月時点で1kg当たり345円と、2023年の「エッグショック」時に記録した最高値350円に肉薄しました。

飼料代の高騰も重なり、価格が下がりにくい構造は固定化しつつあります。食品メーカーにとって、鶏卵はいまや「リスク商材」として認識されるようになりました。

出典:JA全農たまご「鶏卵相場情報」

魚介類

海水温の上昇と海流変化により、国内の主要漁場が変動しています。サンマやスルメイカなど従来の主要魚種で継続的な不漁が発生するなど、漁獲量が不安定です。

燃油高による漁業コストの増大に加え、国際的な水産物消費の拡大や日本の水産物自給率低下も含め、調達環境は厳しいと言えます。

香辛料(スパイス)

主要スパイスも高値傾向で推移しています。産地の天候不順による収量減少、国際物流コストの上昇、そして円安という3つの要因が重なり合い、調達コストを押し上げています。

2023年産米では猛暑の影響により1等級比率が大きく低下し、品質面で大きな影響が生じ、高温障害は全国的な課題となっていることが示されました。また、相対取引価格も大きく上昇しました。

出典:農林水産省
「令和5(2023)年産水稲の作柄について」
「米に関するマンスリーレポート」

カカオ豆

深刻な供給不足を背景に、カカオ豆の国際相場は2024年に過去最高水準に達しました。その後、ピークを抜けて落ち着きを見せましたが、当時の供給不足は天候要因とカカオの木の病害、さらに農園の老朽化が重なり合うことによるものでした。

天候リスクと農園の老朽化は継続的な課題であるため、カカオ豆の国際相場が極端な動きをする可能性があると考えられます。

このように主原料の高騰がメーカーの粗利を圧迫するなか、従来型の調達手法だけでは対応しきれない局面が増えています。次に、商品企画・開発段階からの具体的な対策を見ていきましょう。

安定した製造のために食品メーカーに求められる対策

原料価格の上昇が構造的な問題である以上、「価格が落ち着くまで待つ」という姿勢にはリスクが伴います。食品メーカーに求められるのは、商品企画と開発の段階から柔軟性を高め、環境変化に適応できる力を備えておくことではないでしょうか。

昨今の調達難に対して求められる商品企画と開発

食品主原料の調達難が続くなか、日本政策金融公庫の「食品産業動向調査(令和6年7月)特別調査」では、外国産農林水産物の今後の調達に「懸念がある」と回答した食品事業者が約6割にのぼることが明らかになりました。

懸念の主因は価格の高止まり・上昇見込み(円安要因を含む)であり、同調査では、こうした調達難への対応策として、大きく2つの方向性が確認されています。 第一に、他国産・国産への切り替えをはじめとした代替原料・代替食材の模索。第二に、商品設計の見直しです。

出典:日本政策金融公庫「食品産業動向調査(令和6年7月調査)」

調達環境によって、食肉や魚介類、香辛料、鶏卵、米、カカオなど幅広い品目で、配合量の調整やグレード変更が求められる場面があると思います。ただし、こうした見直しには品質上の課題が伴うケースも少なくありません。

配合を変えれば風味のバランスが崩れ、グレードを下げれば異味異臭が目立つリスクがあります。鶏卵や動物脂の一部代替においては、食感や乳化特性の再現が壁になるケースも珍しくありません。品質課題を適切に管理できなければ、最終製品の競争力に影響をおよぼす可能性があります。

では、こうした品質課題にどのような解決策があるのでしょうか。品目ごとの具体事例を確認していきます。

業界別の調達難の対策事例

品質課題を克服しながら原料の代替や配合見直しに成功した事例は、すでに複数の品目で生まれています。油脂の加工技術や乳化技術を活用した具体的な取り組みを、品目ごとにご紹介します。

鶏卵

鶏卵の価格高騰を背景に、大豆由来の卵代替素材への関心が食品メーカーの間で高まっています。当社の「ソイプルーブEG30」は、大豆粉と大豆たんぱくを組み合わせ、卵が担う機能に着目して設計された素材です。独自の脱臭技術により大豆特有の青臭さを低減しつつ、冷凍耐性やドリップ抑制といった機能も備えています。

鶏卵の「代替品」にとどまらず、季節による品質のばらつきを抑える用途でも活用が見込まれます。製パン向けには、大豆粉の粒子径や変性度を調整して膨らみやすさに配慮した「アルファプラス5600」も開発されています。

香辛料(スパイス)

スパイス原料の高騰が続くなか、油脂技術を活用した風味設計も一つのアプローチとして注目を集めています。当社の「日清素材ストロングR70」は、含水性、拡散性、残存性により、口の中で風味成分が広がりやすくなる仕組みを持っています。

少量のスパイスでも十分な香りと持続する後味を引き出せるため、高価な風味原料の使用量を削減しながら味覚品質を維持できます。

冷蔵保存中の経時劣化による品質低下や、米自体の品質のばらつきに対して有効な対策が、乳化剤を配合した炊飯油の使用です。

当社の「日清炊飯油CH2」は、生米に対し0.5〜1.0%を添加するだけで、低温保管後もご飯がボソボソになりにくくなる炊飯油です。油滴を微細に分散させて米粒を均一にコーティングし、水分蒸発を抑えることで、冷蔵保存後もふっくらとした食感を保ちます。

分散性にも優れており、レシチンフリー処方のためアレルゲン対応も不要です。さらに酢飯においても同様の効果が確認されており、低温流通が一般的な寿司業態での活用にも適しています。粒立ちや離型性の向上にも寄与し、作業性の改善と製造ラインの清掃の簡便化にもつながります。

「日清炊飯油CH2」に加え、米飯改良剤を併用することで、さらに硬さ(老化)を抑制できることも確認されています。

カカオ豆

カカオ豆相場の高騰の対策として、ココアバター代用脂(CBE)が活用されています。酵素エステル交換反応を用いて製造されるCBEは、比較的入手が容易なひまわり油等を原料とするため、天然のココアバターと比べて供給が安定しやすく、ロットによる品質のばらつきも小さくなっています。

チョコレートの口溶けや型抜け性能にかかわる融点・結晶化速度をコントロールしやすく、耐熱性の向上やブルーム抑制にも寄与します。

【まとめ】品質を犠牲にしないコスト対策のために

主原料の代替や配合変更は「単純な置き換え」では完結しません。風味・食感・冷凍耐性・製造ラインとの適合性など、多くの要素を同時に調整する必要があります。

当社では、味覚センサーやテクスチャーアナライザーを活用した品質の定量評価から、顧客の製造工程を再現した試作、最終製品を見据えた配合最適化まで、伴走型の技術支援を行っています。

原料の調達環境が不透明さを増すいまこそ、早い段階で選択肢を広げておくことが将来のリスク軽減につながるはずです。まずはお気軽にお問い合わせください。

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