流通ジャーナリストが読む 冷凍食品「次のヒット」【前編】|朝食ワンハンドと“体調で選ぶ”ワンプレート

流通ジャーナリストが読む 冷凍食品「次のヒット」【前編】|朝食ワンハンドと“体調で選ぶ”ワンプレート

冷凍食品の国内生産額は8,577億円と過去最高を更新し、売り場には新商品が次々と並んでいます。それでも、冷凍ケースにはまだ埋まっていない“空白地帯”が残されている――。

流通ジャーナリストの阿部牧人氏が、売り場の視点から5つのキーワードでこれからの冷食市場を読み解きます。
【キーワード】
・食事のために生活を中断しない
・身体に合わない食事をとるロスをなくす
・冷凍食品でも「出来たて」が
・買っているのは高い素材ではなく「買えない工程」
・「買いに行った日」から「食べたい日」へ

前編では、「暮らしの事情」から生まれる2つの機能的な欲求、「食事のために生活を中断しない」「身体に合わない食事をとるロスをなくす」を取り上げます。

夕食用には6〜7割の人が買う冷凍食品が、なぜ朝食用では1割台にとどまるのか。そこから見えてくる“片手で一食が完結する”商品の条件とは。そして、急成長したワンプレート冷食や冷凍宅配弁当が次に向かう、新しい「選ばれ方」とは。
具体的な商品例とともにご紹介します。

【筆者プロフィール】
阿部 牧人(あべ・まきと)
流通ジャーナリスト 株式会社セブン‐イレブン・ジャパンを経て、インド・中国・インドネシアで現地コンビニチェーンのコンサルティングに従事。インドではコンビニの立ち上げに参画し、商品部門を担当。2022年より株式会社SARAH勤務。「月刊コンビニ」「月刊販売革新」などに執筆。

流通ジャーナリストが読む 冷凍食品「次のヒット」【前編】|朝食ワンハンドと“体調で選ぶ”ワンプレート

はじめに ── 拡大する市場と、冷凍食品のニーズの変化

冷凍食品市場は拡大を続けています。日本冷凍食品協会が発表した令和7年の速報値によれば、国内生産金額は8,577億円に達し、過去最高額を更新しました。数量ベースでも業務用が約81.4万トン(対前年比101.9%)、家庭用が約76.0万トン(同102.8%)とともに前年を上回り、この双方が市場全体の成長を力強く押し上げています。

出典:日本冷凍食品協会「令和7年 冷凍食品の生産・消費について(速報)」

売り場を見れば、そのことは実感でき、スーパーは冷凍ケースの面積を広げ、和洋中からスイーツ、弁当までフルラインで揃えるようになっています。また、コンビニやドラッグストアでは、限られた冷凍棚の「優良棚」をめぐる争奪戦が繰り広げられ、行くたびに新しい商品が並んでいます。

そして、変わったのは売り場の規模だけではなく、日常における存在感そのものも増しています。かつて冷凍食品は、安いときにまとめ買いして冷凍庫にしまっておく保存食という存在でしたが、同協会の調査によれば、購入目的は夕食が6〜7割、昼食が4割台と続き、弁当用、間食・夜食、朝食、料理に使う素材として、またデザートにまで広がっています。

出典:日本冷凍食品協会「“冷凍食品の利用状況”実態調査」(令和7年4月公表、2025年2月実施、25歳以上の男女1,250人)

このように朝から夜、主食からデザートまで、というように、冷凍食品は一日のあらゆる食シーンに入り込んでいます。振り返れば、冷凍食品は常に暮らしの変化に応えるかたちで役割を広げてきました。共働きが増えれば弁当のおかずで手軽さに応え、個食が進めば一人分の一食を生み、家で過ごす時間が増えればプレミアム化するなど役割を増やしてきたのです。そして、これからも暮らしは変化し続けるだけに、これらの変化を意識することが冷凍食品のこれからのトレンドを掴む上で重要になります。